ERATO 湊合宿、交流会というよりは、真剣勝負の場

投稿者: | 2010年12月6日

湊先生のキーノート講演でキックオフとなった

11月29日(月)から12月1日(水)まで、北海道の千歳空港と札幌の間にある北広島のホテルで、ERATO 湊離散構造処理系の研修合宿があり、私も参加させていただいた。11月12日(金)にも、やはり同じグループの研究会(テレビ会議)で、私の研究内容を発表させていただいている。正式なメンバーではないが、研究会などの連絡用のメーリングリストに入れさせていただいている。

今回の合宿は、自分の研究成果ではなく、将来成果を出したい分野のテーマ(確率分布の因数分解)を選んだ。拙書「ベイジアンネットワーク入門」の2.2節と4.3節で掲載した「Junction Tree」とその一般化である「領域グラフ」に関して紹介した(クローズドな研究会なので、私の発表の概略のみをお伝えする)。計算量やアルゴリズムをバックグランドにしている方が多く、興味をもっていただけるものと思っていた。

私の発表スライドの一部

  • 論理回路設計
  • 確率推論
  • 統計力学の分配関数の計算

などは、n個の変数の関数になっていて、一般には2のn乗回の計算が必要となる。変数同士の依存関係を無向グラフで表し、必要ならさらに辺を加えてchordalとすると、その極大クリークを頂点とするJunction Treeを生成することができる。そして、その極大クリークに含まれる変数の集合が、あたかも変数であるかのように見ることができる。そうすれば、論理式や確率分布が木の形で表現でき、因数分解によって表現が簡単になる。特に、この理論を一般化した領域グラフについて説明した。Yieldaらの一般化確率伝播の論文で示された概念であるが、私は確率推論というよりは、これらのNP困難問題をこの一般化因数分解によって、しのげる場合がある、という理解をしている。

初日の夜など、アルコールも飲まずに、温泉も入らずに議論をされている方が多かった。次回は、湊先生のZDDについて詳しく記載されているKnuthのテキストをじっくり読んで、刺激を受ける側というよりは刺激を与える側として、参加したい。