第32回情報理論とその応用シンポジウム(SITA 2009) 

投稿者: | 2009年12月5日
中原中也記念館

中原中也記念館

山口県山口市の湯田温泉で12/2(水)-12/4(金)に開催されたSITA2009に参加した。私自身、SITA 2000(熊本県阿蘇)以来、久々の参加である。第7回の開催(SITA1984, 鬼怒川)のとき、私は修士の1年で私のいた研究室(早稲田大学)が幹事だった。1995,1996(Stanfordで在外研究員)、2001(Yaleで在外研究員)以外は、ほぼ毎回参加していた。IBISなどの学習理論やSCISなどの代数曲線暗号などのテーマに没頭していたこともあった。ただ、研究の進め方や、特に学習理論のアプローチとして、今でも情報理論がベースにある。SITAなくして、現在の研究者Joe Suzukiはなかったとも言えるかもしれない。私自身、情報理論とその応用学会については、1997-1998年に企画幹事、1999-2000年に企画理事をつとめている。

SITA 2009 ワークショップ

SITA 2009 ワークショップ

SITAでは通常、初日(火曜)は情報理論研究会のチュートリアル講演が開催される。大学での用務があって、その日の晩遅くに開催地である山口市の湯田温泉についた(写真は、山口市のシンボルである中原中也記念館)。昔からの同業者に会い、ほっとしたと同時に、やはりここがホームグランドなんだという気持ちでいっぱいになった。温泉のあるところで開催されること以外に、いくつかユニークな特徴がある。ワークショップ(写真はその光景)といって、夕食後、ホットなテーマについて話題提供者が発表して議論をする。その際にお酒も出る。リラックスして、自由に発言する雰囲気がある。

情報理論で盛り上がっているテーマは、2000年までとは大きく異なっている。今回は、情報源符号化、Shannon理論の分野では、多端子情報理論の成果発表が多かった。「○○は使えないからやらない」と断言することはできない、ということが今回身にしみてわかった。私が情報理論を始めた1980年代では、多端子情報理論は使えない学問、死んだ学問とまで言われていた。私が尊敬する電気通信大学を退官された韓太舜先生、小林欽吾先生は、そういうことを気にせずに多端子情報理論をさらに極めていった。現在では、UUSee.comやマイクロソフトのダウンロードに利用されていて、LDCP符号の限界の評価にも使われている。ワークショップでは、植松友彦先生(東京工業大学)のお弟子さん3名による発表を聞かせていただいた。分野外でよくわからない箇所もあったが、よく鍛えられているという印象をもった。

私の発表は、Chow-Liuアルゴリズムの一般化に関するものである。

SITAは合宿形式なので、夜はどこかの部屋に行って議論を続けることになる(しらふの人は少ない)。IBISでお世話になっている樺島祥介先生(東京工業大学)、田中利幸先生(京都大学)、三村和史先生(広島市立大学)といろいろな話題で話し込んだ。研究会では以前から面識があるが、個人的にはあまり詳しくは存じ上げていなかった。こういう場で親睦を深められるというのもSITAの特徴である。

SITA2009開催のためにご尽力いただいた山口大学の柳先生をはじめ、実行委員、プログラム委員の皆様に感謝したい。