解説: 人工知能学会誌「ベイジアンネットワークと代数幾何」

投稿者: | 2010年6月5日

人工知能学会誌2010年11月号で出版される

2009年11月の人工知能基本問題研究会の後、電気通信大学の植野真臣先生が中心となり、人工知能学会誌でベイジアンネットワーク(BN)の特集号を組むことになり、私も解説記事を書かせていただくことになった。

「ベイジアンネットワークと代数幾何」という仰々しいタイトルになっている。BNの定義と条件付独立性のイデアル表現という2部構成になっている。私は、BNの専門家とよばれる人でも、その(オリジナルの)定義を知らない人が多い、という問題意識をもっている。確率を使わない一般的な定義(拙書「ベイジアンネットワーク入門」を参照されたい)については、日本ではほとんど知られていなかった。そもそも、BNに限らず、GAでもSVMでも、数学的な定義を知らないで、情報処理の研究や開発をしている人が非常に多いように思われる。

拙書「ベイジアンネットワーク入門」培風館


他方、代数幾何的な方法は、BerkeleyのB. Sturmfelsを中心とした可換環の研究グループで着手された。確率パラメータを不定文字とする多項式環に含まれるイデアルが、確率モデルを表現する。BNの条件付独立性とその素イデアルによる表現との間でどのような関係があるかを考察する。S. Sullivantが先駆的な成果を出している(論文を読む限り、かなり優秀な人間であると思われる)。彼の提示している未解決問題を以前の学生に修士論文でチャレンジさせたことがあったが、全く歯が立たなかった。

人工知能の研究者開発者にとって敷居が高いことは十分承知の上で、私なりにわかっていただける解説を書いたつもりである。2010年11月号に掲載されるという。