2009年10月2日(金)から3日(土)まで、東京大学本郷キャンパスで開催された人第2回人工知能学会進化計算フロンティア研究会(SIG-ECF)に参加し、最近の結果を発表した。今年から始まった研究会で、1回目は招待講演だけで2009年5月に開催された。40分の口頭発表(8件)とポスターセッションの発表があった。GA,GP,ECといった進化計算に関する国内の専門の研究会はもっと前からあってよかった。東京工業大学の小林重信先生を中心とした方々がご足労されて、研究会として発足したということであった。
私自身は、1993年のICGA, 1997年のFOGA, 2005年のGECCO、およびIEEE Trans. on System Man and Cubern.という雑誌(1995, 1998)で研究成果を発表したことがある。この分野での成果は少ないが、Markov連鎖を用いてGAの性能を解析する論文は、多くの論文に参考文献として引用させていただいた。数式で証明する論文は少ないのと、IEEEのジャーナルに掲載されたということで、少なからずインパクトがあったのかもしれない。
今回の発表は、大偏差原理に基づく解析方法についてであった。GAの数学的解析でも、交叉の影響を考慮して証明することは、容易ではない。突然変異確率をゼロに近づけること、選択圧力を高くすることは、統計力学において絶対温度を高くすることに相当する。40分の発表というのは、発表25分の他に質疑が15分で、コメンテータ2名をアサインして、活発な議論を誘発するというねらいのものであった。思い切った試みで、すばらしいと思った。私の発表では、防衛大学校の高橋先生、統計数理研究所の染谷先生という2名の方にコメンテータとして質問していただいた。数学的なアプローチをしている研究者は国内では少ないというのは知っていた。質問された方や懇親会で挨拶させていただいた方も、私の昔の論文を読んだことがあるという方が多いことを知ってうれしく思った。
今回は、アウトプットすることの重要性をしみじみ思い知った。金曜の13:00から発表があるので、午前中新幹線の中でスライドのチェックをしていたら、証明の一部に誤りがあることに気がついた。条件を狭めればよいだけのことであったが、名古屋くらいからかなり集中してリカバリをはかった。うまくいかず、スライドを若干修正した。ただ、懇親会のあと、どのように修正すればよいのかわかり、今月中にジャーナルに投稿できるめどが立った。国内の口頭発表は、他人に情報を与えるという意味もあるが、自分へのメリットになることも多い。学生にも、修士論文の完成のために、不完全な結果であっても国内の研究会で発表させている。
第3回のECF研究会は2010年3月に岡山で開催される。最後に、研究会幹事の東京工業大学の小野功先生、ローカルアレンジメントの東京大学の伊庭斉志先生にお世話になったことをお伝えしたい。