1年生の統計学の期末テスト: 解き方を覚えるだけの間違った勉強法から脱却すべし

投稿者: | 2018年7月28日

4月から始まった統計学の1年生の講義、7月27日に期末テストを行った。できる人とできない人とで、大きな差が出た(1/4が80点以上で、1/4が40点以下、平均60点)。残念なことだが、理解をしようとしないで、「解き方を覚えればよい」という考えの学生がかなりいるように思えた。公式を覚えて数字を入れるという作業をしていても、勉強をしていることにならないし、そのやり方をいつかは変えないと、ゼミや卒論を乗り越えることはできない。仮に卒業できたとしても、そういう単純作業しかできない学生は将来、知的な仕事につくことも難しいだろう。まだ1年の前期だし、卒業するまでに変化がおこるものと、信じたい。

以下が今回の問題で、特に問題2,3(頭を使う問題)があまりできていなかった。逆に、問題5,6,7のように演習問題に近い問題はよくできていた。

  1. 標本空間Ω、およびその事象族Fがあたえられたとき、Fを定義域とする写像Pが確率であることの定義をいえ。ただし、その定義は、3個の条件で、最低限のものからなっているものとする(3条件すべて正しいときのみ10点)。
  2. 以下の確率変数X,Yについて、独立ではないが、共分散が0になっているものをすべてえらべ(答えだけで良い、10点)。
    (a) Xが等確率で1,1の値をとり、Y:=X
    (b) U,Vが標準正規分布にしたがうとき、X:=(U+V)/2, Y:=(UV)/2
    (c) Xが標準正規分布にしたがうとき、Y:=X
    (d) (X,Y)=(1,0),(0,1),(1,0),(0,1)が等確率で生じる。
  3. 身体測定をして、体重の小数点以下切り捨て測定した値だけが得られ、そうしたデータによって生成される事象族を考える。以下でそのような事象となるものはどれか(答えだけで良い、10点)。
    (a) 60キロ以上61キロ未満、または62キロ以上64キロ未満
    (b) 64キロより大きく、65キロ以下
    (c) 0キロ以上
    (d) 60キロ以上62.5キロ未満
  4. Σn=AnAnTとかける正則な行列Σn,AnRn×n、ベクトル[μ1,,μn]TRnと独立な標準正規分布にしたがう確率変数U1,,Unをもちいて、確率変数X1,,Xnを、以下で定義する(15点)。
    [X1Xn]=An[U1Un]+[μ1μn]
    (a) 一般のnについて、共分散行列がΣnとなることを証明せよ。
    (b) 一般のnについて、X=(X1,,Xn)の同時確率密度関数fX1Xn(x1,,xn)はどのような式になるか(答えのみでよい)。
  5. 以下の各問に答えよ(20点)
    (a) 確率変数Xの平均がμ、分散がσ2のとき、任意のϵ>0に対して、P(|Xμ|ϵ)σ2ϵ2(チェビシェフの不等式)を証明せよ。ただし、「Zを非負の値をとる確率変数とするとき、a>0として、E[Z]aP(Za)」(マルコフの不等式)は証明なしで用いて良い。
    (b) 平均μが同じで、分散σ12,,σn2が異なる確率変数X1,,Xnについて、
    limn1n2j=1nσj2=0 が成立するとき、確率変数の列X¯1,X¯2,μに確率収束する(大数の弱法則)ことを証明せよ。
  6. 独立に発生した平均μ、分散σ2の正規分布にしたがうX1,,Xnから、X¯n:=1ni=1nXiおよび Sn2:=1ni=1n(XiX¯n)2について(20点)、
    (a) 2S22/σ2が自由度1のχ2分布にしたがうことを証明せよ。
    (b) (n+1)Sn+12/σ2nSn2/σ2が自由度1のχ2分布にしたがうことを証明せよ。ただし、等式(n+1)Sn+12nSn2=nn+1(Xn+1X¯n)2が成立することは証明無しで用いて良い。
    (c) XiX¯n, i=1,,n, とXn+1X¯nの共分散を求めよ。
    (d) nSn2/σ2が自由度n1χ2分布にしたがうことを証明せよ。
  7. 分散σ2の正規分布にしたがうグループ1の確率変数X1,1,,X1,n1の値、グループ2の確率変数X2,1,,X2,n2の値を観測し、両者の平均μ1,μ2の差μ1μ2が0になることの検定を行いたい。X¯1:=1n1i=1n1X1,i , X¯2:=1n2j=1n2X2,j , S12:=1n1i=1n1(X1,iX¯1)2 , S22:=1n2j=1n(X2,jX¯2)2について、μ1=μ2の仮説のもとで、以下の各確率変数は、どのような分布にしたがうか(それぞれ、答えのみでよい。15点)。
    (a) X¯1X¯2σ2/n1+σ2/n2
    (b)  (n1S12+n2S22)/σ2
    (c) (n1+n22)n1n2(n1+n2)(n1S12+n2S22)(X¯1X¯2)