4月から始まった統計学の1年生の講義、7月27日に期末テストを行った。できる人とできない人とで、大きな差が出た(1/4が80点以上で、1/4が40点以下、平均60点)。残念なことだが、理解をしようとしないで、「解き方を覚えればよい」という考えの学生がかなりいるように思えた。公式を覚えて数字を入れるという作業をしていても、勉強をしていることにならないし、そのやり方をいつかは変えないと、ゼミや卒論を乗り越えることはできない。仮に卒業できたとしても、そういう単純作業しかできない学生は将来、知的な仕事につくことも難しいだろう。まだ1年の前期だし、卒業するまでに変化がおこるものと、信じたい。
以下が今回の問題で、特に問題2,3(頭を使う問題)があまりできていなかった。逆に、問題5,6,7のように演習問題に近い問題はよくできていた。
- 標本空間
、およびその事象族 があたえられたとき、 を定義域とする写像 が確率であることの定義をいえ。ただし、その定義は、3個の条件で、最低限のものからなっているものとする(3条件すべて正しいときのみ10点)。 - 以下の確率変数
について、独立ではないが、共分散が0になっているものをすべてえらべ(答えだけで良い、10点)。
(a) が等確率で の値をとり、
(b) が標準正規分布にしたがうとき、 ,
(c) が標準正規分布にしたがうとき、
(d) が等確率で生じる。 - 身体測定をして、体重の小数点以下切り捨て測定した値だけが得られ、そうしたデータによって生成される事象族を考える。以下でそのような事象となるものはどれか(答えだけで良い、10点)。
(a) 60キロ以上61キロ未満、または62キロ以上64キロ未満
(b) 64キロより大きく、65キロ以下
(c) 0キロ以上
(d) 60キロ以上62.5キロ未満 とかける正則な行列 、ベクトル と独立な標準正規分布にしたがう確率変数 をもちいて、確率変数 を、以下で定義する(15点)。
(a) 一般の について、共分散行列が となることを証明せよ。
(b) 一般の について、 の同時確率密度関数 はどのような式になるか(答えのみでよい)。- 以下の各問に答えよ(20点)
(a) 確率変数 の平均が 、分散が のとき、任意の に対して、 (チェビシェフの不等式)を証明せよ。ただし、「 を非負の値をとる確率変数とするとき、 として、 」(マルコフの不等式)は証明なしで用いて良い。
(b) 平均 が同じで、分散 が異なる確率変数 について、
が成立するとき、確率変数の列 が に確率収束する(大数の弱法則)ことを証明せよ。 - 独立に発生した平均
、分散 の正規分布にしたがう から、 および について(20点)、
(a) が自由度1の 分布にしたがうことを証明せよ。
(b) が自由度1の 分布にしたがうことを証明せよ。ただし、等式 が成立することは証明無しで用いて良い。
(c) , , と の共分散を求めよ。
(d) が自由度 の 分布にしたがうことを証明せよ。 - 分散
の正規分布にしたがうグループ1の確率変数 の値、グループ2の確率変数 の値を観測し、両者の平均 の差 が0になることの検定を行いたい。 について、 の仮説のもとで、以下の各確率変数は、どのような分布にしたがうか(それぞれ、答えのみでよい。15点)。
(a)
(b)
(c)