2009年6月に韓国のソウルで開催されたISIT (International Symposium on Information Theory)のBanquetで、韓太舜先生(写真)が日本人として2人目となるShannon賞を受賞することに決定したというアナウンスがされた。私自身、ISITといえば、1988年の神戸、1993年のSan Antonio(テキサス)、1994年のTronheim(ノルウェー)、1995年のWhisler(カナダ)、1997年のUlm(ドイツ)、2003年の横浜と、発表しに足を運んだものであった。月曜から金曜の5日間の会期のうち、水曜の朝にShannonレクチャーといって、前年Shannon賞を受賞した人が講演をする慣例になっている。
Information TheoryはC.E. Shannonが主要な定理を証明した通信(データ圧縮および誤り訂正符号)に関する数理科学の一分野である。日本語に直せば情報理論だが、ロボットや宇宙工学などのはなやかな応用とは縁遠く、むしろ数学の一分野といえる地味な学問である。情報科学のすべてをカバーしている分野ではない。ただ、証明ができたときの感動が大きく、私自身もやみつきになっていった。
日本の情報理論のコミュニティでは、韓先生の受賞のことで湧き上がっている。7月31日(金)に電気通信大学のある調布で開かれたパーティーには多くの人がつめ寄せた。小林欽吾先生をはじめ、いろいろな方のご努力もあったと伺った。非常に多くの人が心の底から受賞を喜んでいて、韓先生に日ごろから共感をもたれている方が圧倒的に多いということ、それだけははっきりいえると思う。
20年も前になるが、川崎の向ヶ丘遊園にあった専修大学におもむき、研究のことで(情報量基準に関して)、相談にいったこともある。「情報と符号化の数理」の英語版(translated by Joe Suzuki)の出版でも、和英がおかしいと何度もしかっていただいた。2010年のISIT(テキサス)では、論文が採択されて、韓先生のShannonレクチャーを聞ければと思っている。