統計学C-Iの中間テスト: 頭を使っているか否か

投稿者: | 2018年6月22日

6月15日(金)に実施した中間試験の問題です。統計学というと、先生によっては、方法論ばかりを説明する講義もありますが、私は反対です。世の中の日進月歩は著しいもので、大学で勉強した知識の中には、卒業するまでに使えなくなるものあります。本質を理解した上で、世の中がどのように変化しても、正しく判断できるような人材を育成したいと思っています。入学したばかりの1年生には「難しいのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、暗記や思い込みに頼らず、ロジックだけで結論を正しく導くことをめざしています。卒業してからも、数学的ロジックのしっかりしている人は、数学を使わない仕事であってもクオリティが(格段に)違います。平均は55点でした。

$\mathbb R$で実数全体、$\mathbb Z$で整数全体(0や負の整数を含む)をあらわすものとする。

1.  任意の閉区間$[a,b]$で生成される$\mathbb R$の部分集合の集合${\cal F}_1$と、任意の開区間$(c,d)$で生成される$\mathbb R$の部分集合の集合${\cal F}_2$について、
(a)  任意の$c\in {\mathbb R}$について、$\{c\}\in {\cal F}_1$および$\{c\}\in {\cal F}_2$を証明せよ。
(b) 任意の$a,b\in {\mathbb R}$について、$(a,b)\in {\cal F}_1$および$[a,b]\in {\cal F}_2$を証明せよ。
(c)  ${\cal F}_1={\cal F}_2$を証明せよ。

2. 集合$\{(m,n)|m,n\in {\mathbb Z}\}$が可算集合であることを証明せよ。

3.
(a) 全体集合$\Omega$を$\mathbb R$とし、確率変数$X$を$\omega\in \Omega$に対して$X(\omega)=-w$で定義するとき、事象$(X\in \{-5\}\cup (-3,1])$を求めよ。
(b) 全体集合$\Omega$を$\mathbb {\mathbb Z}$とし、確率変数$X$を$\omega\in \Omega$に対して$X(\omega)=w^2$で定義するとき、以下の4個の$\Omega$の部分集合のなかで$X$の生成する事象になるものをすべてあげよ。$\{1,2,3,\cdots\}, \{0,1,2,3,\cdots\}, \{-2,-1,0,1,2\}, \{0,1\}$

4.
(a) 全体集合(標本空間)$\Omega$と事象族$\cal F$があたえられたとき、$P: {\cal F}\rightarrow [0,1]$が確率であることの定義をいえ。
(b) 確率の定義に基づいて、以下を証明せよ(定義のどの部分を用いたかを明示すること)。
i)  $A\subseteq B$なる各$A,B\in {\cal F}$について、$P(A)\leq P(B)$
ii) 各$A\in {\cal F}$について、$0\leq P({A})\leq 1$

5. $a,b>0$として、確率変数$X$の確率密度関数が以下であたえられたとき、$$f_X(x)=\left\{
\begin{array}{ll}
\displaystyle \frac{b}{3}e^{b(x+a)},&x<-a\\
\displaystyle \frac{1}{6a},&-a\leq x\leq a\\
\displaystyle \frac{b}{3}e^{-b(x-a)},&a<x
\end{array}
\right.$$
(a) $\int_{-\infty}^\infty f_X(x)dx=1$を示せ。
(b) 分布関数$F_X(x)$を求めよ。

6. $n$を正の整数、$0<p<1$として、確率変数$X$が$$P(X=k)=\left(\begin{array}{c}n\\k\end{array}\right)p^k(1-p)^{n-p}\ ,\ k=1,\cdots, n$$なる分布にしたがうとき、以下の各値を求めよ。
(a) $\sum_{k=0}^nkP(X=k)$
(b) $\sum_{k=0}^nk^2P(X=k)$
(導出をしないで、答えだけを書いた場合、0点)。

7. 確率変数$X,Y$が標準正規分布にしたがうとき、
(a) 確率変数$U=X^2$の確率密度関数$f_U(u)$を$X$の確率密度関数$$f_X(x)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}}e^{-\frac{x^2}{2}}$$から導出せよ。
(b) 確率変数$V=X^2+Y^2$の確率密度関数$f_V$を$f_U$から導出せよ。
(導出をしないで、答えだけを書いた場合、0点)。

8. 確率変数$X,Y$の確率密度関数が$f_X,f_Y$であり、$Y$は非負の値のみをとるものとする。
(a) 確率変数$Z=\sqrt{Y/n}$の確率密度関数$f_Z$を$f_Y$を用いてかけ。
(b) 確率変数$T=X/Z$の確率密度関数$f_T$を$f_T(t)=\int_{0}^\infty f_X(st)f_Z(s)|J|ds$とかいたときに、ヤコビアン$J$を求めよ。